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2016年11月 8日 (火)

ロマンポルノと、さらば青春

ゆうべ、たまたま小椋佳さんの「さらば青春」が耳に入ってきた。プチブル香る小椋佳さんの音楽はあまり好まなかったぼくではあるが「さらば青春」だけには妙にノスタルジーをかき立てられる。というのも、高校を卒業する冬、つまりは大学受験でいっぱいっぱいになっているはずの時期に、将来を見失ってすべてを放り出し、ぶらりと京都へ遊びに行ったときのことを思い出すからだ。

当時のぼくにとって京都は「反権威」の象徴的な土地だった。だから京都に住もう、そのためには京都の大学へ入学しようと思っていた。今から思えば、なんだか都合のいい位置づけなんだけれど、まあ若気の至りというやつだ。

ただ高校時代に(たぶん)ちょっと頭を患ったせいで卒業時点では到底学力が伴わず、それを自覚していたぼくは行き場をなくして自堕落な生活に陥っていた。確か高校卒業前に、現役で大学に進学することを自分の中であきらめて、将来に対する不安を抱え込んだままフラフラ暮らしていたのだった。それでも「東京じゃねえよ、京都だろ」とうそぶくことは忘れなかったんだが。

で、同級生達が受験勉強の総仕上げにかかっているのを横目に、ぼくは新幹線に乗って京都へ散歩に出かけた。1日目は、きりりと引き締まる空気の中、お寺を巡ってはスケッチをした。2日目には、昔住んでいた枚方へ足を伸ばして、昔の家や周囲の遊び場をスケッチするつもりだった。
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そのとき描いた枚方の景色


ということはどこかで泊まらなければならない。でも高校生のことだ、宿に泊まるほどのお金は持ち合わせてはいなかった。それで1日目の夜は、新京極のお好み焼き屋で日本酒を熱燗で1合呑みながらお好み焼きを食べ、そのまま近くのオールナイト上映をしている映画館に入った。ずいぶんきれいになってしまったけれど、今でもその映画館は健在だ。

番組はというと、オールナイト上映お約束の日活ロマンポルノで、その1本が「卒業5分前」だった。今調べると、正式タイトルは「卒業5分前・群姦(リンチ)」だったようだがその記憶はない。でもその映画のテーマ音楽が、なんとまあ小椋佳さんの「さらば青春」だったことは憶えている。主演は小川亜佐美さん。男子高校に通っていた当時のぼくにとっては、世の中にはこんなに美しくてエロティックな生物が野良で歩いているのかと、珍獣的な憧れの存在だった。

数々の個性的な映像作家、俳優、女優を生み出すことになる日活ロマンポルノもまた、ぼくにとってはある意味「反権威」の象徴だった。権威や世の中の流れに背を向けて京都に遊び、一杯呑んだ後で日活ロマンポルノを観て夜を明かす高校生のオレ格好いいと、まあ要するに、ぼくは思い通りにならない世の中に落ちこぼれかかって拗ねていただけのお子ちゃまだったわけだ。

日活ロマンポルノは、成人映画とくくってしまえばそれまでだけれども、今のAVとはちょっと位置づけが違っていたように感じる。敢えていうならば安保世代やそれに関わった人々に影響を受けた心情シンパ(ぼくがまさにそれだが)の敗走先であって、単純ないわゆる「ピンク映画」とは違って、エロティシズムの裏に独特の主義主張が通っていた(と、思っていた)。

当時の小椋佳さんはレコード大賞作家であり人気シンガーソングライターだった。今から考えればよくもまあ楽曲を「ポルノ映画」に提供したもんだなとは思うけれど、その理由や経緯は知らないまま(今でも知らないけど)、ぼくは勝手にちんけな満足感を覚えたものだ。世の中の秩序の象徴である小椋佳さん(なにしろ東大を出て都市銀行に就職してそこから大メディアの寵児になったわけだから)を引きずり込んだことで、敗者の巣窟であった日活ロマンポルノが、まるで勝者である社会に一矢報いた図式に見えたからだ。なんとも青臭いこじつけだが、若々しくてよろしいような気もする。

とかなんとかいう思い出が、たまたま聞こえてきた「さらば青春」の向こうに浮かんできて、おっさんは懐かしさに包まれたのだった。このたび日活ロマンポルノが甦るらしいのだが、これは見に行かなくちゃいけないかなあ、と思う今日この頃である。

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コメント

かってないしみじみとした文ですね。

投稿: 田中靖 | 2016年11月 8日 (火) 20:52

日活ロマンポルノが安保世代やその心情シンパの「敗走先」との表現は言い得て妙ですね。ロマンポルノが力を失ったのは,ビデオ(AV)の普及によるものという分析が一般的ですが,世間からそのような敗北感が薄れてしまったことも一因だと思います。

投稿: CAD | 2017年4月 8日 (土) 20:23

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