万博記念公園に行ったよ
先日、大阪の万博記念公園に行って来た。ぼくはこの場所のリピーターである。万博記念公園というと、例の塔がある場所、と思われがちだが、ぼくの目的は塔の見物ではない。あの公園は、塔抜きでも実は結構興味深い場所なのだ。
1970年の万国博覧会は、里山だった千里丘陵を強引に造成した敷地に近未来的(って、今が当時の近未来なわけだが)建物を林立させて開催された。博覧会終了後、建物のほとんどは取り壊されたり移築されたりして跡地は万博記念公園となった。
ちなみに、あの特徴的なオーストラリア館は四日市に移築された。鈴鹿サーキットの仕事ついでに見物に行ったりしたんだけども、一昨年あたりに取り壊されたとか。残念だなあ。それはともかく。
万博記念公園建設にあたっては、万博のために破壊した土地を自然に帰すことがテーマになって、1972年、流行の盛り土などして造成し直し60万本と言われる樹木が植えられて自然文化園が作られた。万博記念公園の大部分は、この自然文化園である。
この自然文化園が広大でよろしい。130ヘクタールとかいう敷地の半分は芝生を敷き詰めた都市型公園、半分は里山を再現した森林になっている。芝生の方は、幸福な家族たちがいろんな遊び道具を拡げて生活を満喫していればいいんだけど、ひねくれたおっさんには塔の西側に広がる森林地帯がおもしろい。
というのも、ここは今、自然環境に関する研究の場にもなっているからだ。1972年に着工した自然文化園の完成は2000年の計画で、30年経てば植林も定着する予定だった。ところが30年の間に、様々な種類の植物が繁茂するはずだった森では、一部広葉樹のみが残って他の多くの植物が枯れ、当初期待していた生物多様性に富む環境が成立していないことが明らかになっていったわけだ。
そこで自然文化園運営は、生物多様性に富む自立した森の再生へ舵取りすることになった。自立した森林とは何かというと、人間が何か手を入れてメンテナンスしなくても自然環境が成立する森林のことだ。要するに、ぶち壊してしまった環境を、植物や生物が勝手に世代交代して多様な生態系が安定維持される環境へ再生するためには何をどうすればいいのかを改めて研究しましょうということになったのだ。
植物を植えて緑化するというだけでは自然は復活しない。そこで胸を張ってしまってはいわゆるグリーンウォッシングで終わってしまう。そこから一歩踏み込んで、森を自立させようという取り組みは、言うところでは世界初の試みなんだそうだ。中心になっているのは研究者や関係機関、ボランティアが集まった「自立した森再生センター」という団体らしい。この団体のことはよく知らないけども、少なくともその目指すところについてのみ言えば、非常に意義があるし興味深い試みだと思う。
具体的には森林の中に20箇所あまりの実験区が設けられて、それぞれ林相転換だとか世代交代だとか、テーマを決めて研究・実験が行われている。その、世界初の研究・実験の成果と途中経過を眺め、体感できるという意味で、万博記念公園の自然文化園はとても面白くて好きな場所である。1日歩いていたって飽きない。というか、1日では歩ききれない。いつも、何かのついでに寄るだけなので、今度はじっくりここを目的に出かけたいんだけど、大阪は遠いからなあ。
ここを散策していると、猛烈に学習意欲が湧いてくる。せっかく山ほど勉強できる大学に通っていたというのに、ぼくときたら朝から晩まで、じゃなくて晩から朝までポンコツ自動車をいじっては乗り回して昼間は寝てばかりいたんだから悔やまれる。いやもちろんそういう経験が下地になって今の生活があることもよくわかっているんだが。ああ、勉強がしたい。随分馬齢を重ねたけれど、ぼくの人生には、まだまだ学ばなくてはいけないことが山ほど残っているんだ。
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